神岡地下観測所内にラドン観測網を設置してラドン濃度の連続観測を行っている。本研究の目的は、第1に大型タンク内の純水中に溶存しているラドン除去方法の確立と、第2に鉱内の断層湧水中のラドン濃度の連続観測による地震予知の基礎研究である。 神岡鉱山内で運用されているラドン観測網は、3台のマイコンを基点として合計24個の水中・気中ラドン検出器を設置し、マイコン・パソコン・ワークステーション間をLANで接続して、観測データを10分間隔で取得するシステムである。このシステムにより鉱山内の数百メートル離れた地点でもラドン濃度の同時連続測定が可能となっている。また新たに水中のラドン濃度の直接測定を目的として、水は通さないがラドンを通す機能膜を用いた高感度水中ラドン検出器が開発された。 大型水タンクを用いた地下実験では純水中に溶け込んでいるラドンがニュートリノ検出の雑音となり、これを除去することが次期実験計画に向けての非常に重要な課題となっている。新型水中ラドン検出器がタンク内の水中に設置されており、純水中にラドン濃度は徐々に低下して約0.5(Bq/m^3)となっている。水タンクには鉱山内空気(高ラドン濃度約3000(Bq/m^3)の侵入を防ぐために上面に蓋がかぶせてあり、また蓋内部へは常にラドン除去空気製造装置から空気(低ラドン濃度0.005(Bq/m^3)が送り込まれている。しかし蓋のわずかな隙間からタンク内部へラドンが侵入しており、この経路を遮断することが最も重要である。 現在地震予知の基礎研究を目的として、鉱内にある北20号断層の2箇所からの湧水を配管して水中ラドン濃度を連続測定している、この間ラドンのカウント数は安定した変化を示しており、1993年2月7日に観測点から約200Km離れた能登半島沖で発生したM=6.6の地震については、地震に関係する思われるラドンの変動は観測されなかった。
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