研究概要 |
新しいラドン観測装置を用いて、地下千メートルの東京大学宇宙線研究所神岡地下観測所でラドンの観測を行っている。巨大水タンクを用いた地下実験では、水中に溶けているラドンを除去することが重要であり、坑道や純水装置、水タンク内のラドン濃度の時間変動のデータは、ラドン除去対策の指針を与えるものとなっている。また、観測所から2キロメートル南には跡津川断層があり、この断層は中部地方でも最も有数の活断層であり、地震の発生に関連すると思われる断層からの湧水中のラドン濃度の変動について、観測データを集積して地震予知のための基礎研究を行っている。 水中のラドン濃度を測定するために水没型の水中ラドン検出器が新しく開発された。これは静電捕集型ラドン検出部を防水密閉容器に収納して、水との接触部には水を通さないがラドンガスを透過させる機能性分離膜を取り付けたものである。この検出器を神岡地下観測所で10ヵ月間使用した結果、地下水中の10,000(Bq/m^3)の高ラドン濃度から、純水中の0.5(Bq/m^3)の低ラドン濃度の変動を長期間安定して測定することが可能であることがわかった。その結果、1993年1月10日から6月6日までのカミオカンデ内の水中ラドン濃度は0.51±0.19(Bq/m^3)という結果が得られた。 1993年7月29日18時57分に岐阜県中部でマグニチュード4.7の地震が発生した。この地震にともなう前兆現象として、7月19日頃から7月29日の地震発生の直前までカウント数は減少した。地震はカウント数の減少した一番最小の時に発生した。その前後でラドン濃度が20%程変化した事を確かめることができた。 ラドン観測用のARCNETとカミオカンデ内のEthernetとが接続された。今回のワークステーション導入とシステム改良によって、遠隔地からネットワークによるラドン観測システムの監視とデータ解析が可能になった。
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