地下千メートルの東京大学宇宙線研究所神岡地下観測所でラドンの連続観測を行っている。本研究の目的は、第1に大型タンク内の純水中に溶存しているラドン除去方法の確立と、第2に鉱内の断層湧水中のラドン濃度の変動による地震予知の基礎研究である。 大型水タンクを用いた地下実験では純水中に溶け込んでいるラドンがニュートリノ検出の雑音となり、これを除去することがスーパーカミオカンデ実験における重要課題である。新たに水は通さないがラドンガスを通す機能性ガス分離膜を用いた水沈型水中ラドン検出器を開発した。この検出器を使用すると、地下水中の一万(Bgm^<-3>)の高ラドン濃度から、純水中の0.1(Bgm^<-3>)の低ラドン濃度の変化を長期間安定して測定することが可能で、カミオカンデの純水中のラドン濃度は0.5(Bgm^<-3>)という結果が得られた。また、カミオカンデのタンク内に存在する物質からのラドンの散逸率が測定された。これらの散逸率を用いてタンク内物質から放出されるタンク内のラドンの総量は83(Bg)と見積もられた。 地震予知の基礎研究を目的として、鉱内の北20号断層近傍の2箇所からの湧水中のラドン濃度の変動を連続観測している。1993年7月29日に岐阜県中部でマグニチュード4.7の地震が発生した。ラドン濃度は7月19日頃から減少して、濃度が一番減少した時に地震が発生して、約25日間で元のレベルまで回復した。このような変化の様子は既に報告されている1991年2月28日の跡津川断層沿いのマグニチュード3.9の地震とかなりよく似ている。地下深部での地震予知を目的としたラドン観測は、気温・気圧・降雨などの環境要素の影響が極めて少なく、S/N比を上げるためにも大変に有効であることがわかった。 またラドン観測用のワークステーション導入とシステム改良によって、遠隔地からでもラドン観測システムの監視とデータ解析ができる。
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