研究概要 |
『準安定超伝導錫粒子』を用いた『低温粒子検出器』の開発研究を行っている。宇宙暗黒物質粒子やニュートリノ等の検出が目的である。 平成3年度までに,温度2Kの下で直径200mumの錫粒子にalpha線を入射し,それによる反跳エネルギーが数MeVの感度で検出できることを確認した。平成4年度には,稀釈冷凍機を用いて温度を30mKに下げ,粒子30mumの錫粒子に60keVのgamma線を照射する実験を行い,錫原子のK殻電子,L殻電子のイオン化(光電効果)によるエネルギー吸収を測定した。吸収率は理論計算の結果と定量的に一致することが確かめられ,イオン化された電子による熱エネルギーの拡散量を,0.9keVまで検出できることが分かった。したがって『準安定超伝導錫粒子』が検出できるエネルギーの大きさとしては,粒径200mum・温度2Kの場合の数MeVから粒径30mum・30mKの0.9keVまで,3桁ほど向上したことになる。 以上の研究成果は,ニュートリノ天体物理学国際シンポジゥム(1992年10月,高山市/神岡),第5回低温粒子検出器国際ワークショップ(1993年7月,Univ.of Calif.,Berkeley),および第20回低温物理学国際会議(1993年8月,Univ.of Oregon)で発表した。 平成5年度には,液体He温度で粒径30mumの錫粒子に放射線を照射し,超伝導状態と常伝導状態とを行き来するフリップフロップ現象について精密な実験を行った。微粒子が球状の場合にこの現象が生じるには,極めて厳しい条件が付けられることが分かった。現在,詳しい解析を行っている。 また,錫粒子に疑似暗黒物質として中性子を照射し,その反応を調べる実験も開始した。現在本実験は続行中である。
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