研究概要 |
宇宙暗黒物質粒子やニュートリノ等の検出を目的として,『準安定超伝導錫粒子』を用いた『低温粒子検出器』の開発研究を,平成4年度から行ってきた。 直径200μmの錫粒子にα線を入射した場合,温度2Kの下で蓄積エネルギーが数MeVの感度で検出できることを確認した。さらに,稀釈冷凍機を用いて温度を30mKに下げると,60keVのγ線照射に対して,錫原子のK,L殻からイオン化された電子による熱エネルギーを,粒径30μmの錫粒子で0.9keVまで検出できることが分かった。 平成5年度から6年度にかけては,液体He温度で粒径30μmの錫粒子に放射線を照射し,超伝導状態と常伝導状態とを行き来するフリップフロツプ現象について精密実験を行った。球状微粒子にこの現象が生じるためには,準安定超伝導状態における試料物質特有の熱化条件(Global heating/Local heating)に,極めて厳しい条件が付けられることが分かった。現在,この現象に関する報告文をまとめているところである。 一方,宇宙由来の暗黒物質を検出するプロトタイプ型観測装置を準備した。標的は,粒径30μmの錫粒子約1gから構成されている。標的に入る信号の中から宇宙線ミュー粒子を選びだす手順などを確立する必要があるが,試運転を行いながらその作業を進めていく予定である。但し,平成7年1月に兵庫県南部を襲った地震により,耐震装置を施していなかったため観測装置も少なからぬ被害を受け,現在は装置の点検と再調整を行っている状況にある。調整が終了次第,運転を開始する。
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