本研究の特徴はこれまで困難であった100mk以下の強磁場(〜10テスラ)極低温磁化測定技術を開発し、低い特性温度を持った磁性体における低温磁性の解明に応用するものである。本計画では新しい試みとしてキャパシタンスセルを用いたファラデー法を用いる。そこで本年度はまず、磁化を検出するためのキャパシタンスセルの設計・試作と、システムのテストに重点をおいた。種々のテストの結果、厚さ90〜140μmのガラス薄板に金属を蒸着したものを可動電極として用いることによって、加重検出感度10マイクログラムを得た。本年度購入した磁場勾配コイル付超伝導マグネットとデジタルキャパシタンスブリッジと組み合わせることにより、1emuの磁化を10^<-4>〜10^<-5>の分解能で測定することが出来、第一段階としては十分であると考えている。 平行して行っている物性研究の面で新たに得られた知見は、2種類の重い電子系希釈系において、低温で特徴的な現象を見出したことである。第一は、URu_2Si_2をThで溥めた糸であり、帯磁率が低温でlog発散していることが明らかとなった。これは2チャンネル近藤効果と呼ばられる現象で、不純物スピンが伝普電子によってオーバースクリーングされるために不完全なスピンの自由度が残ることによるが、実験的に明らかにされたのは初めてである。第2点は、CeRu_2Si_2の等体積希釈系においてやはり帯磁率が低温で上昇しつづける非フェルミ液体的挙動を示したが、この場合はCeイオンの近藤温度Tkが局所環境効果によってきわめて広いエネルギースケールにわたって分布してしまうことで説明される。いずれも極低温下の磁性として興味ある系であると考えられる。
|