研究概要 |
重い電子系の研究では、その特徴的温度スケールが低いために、その基底状態の挙動を探るためには1K以下の低温が必要になることが多い。しかし磁化に関しては、主として技術的な困難さから、これまで国内ではAC法を除く^3He温度以下での測定はほとんど行なわれていなかった。本研究は最低温度100mKを目標に、磁場9Tまでの新しいファラデー法極低温磁化測定装置を開発し、実用化することが目的である。 ファラデー法磁化測定のポイントは磁場勾配の発生法と力の検出法である。まず、磁場勾配については、均一な中心磁場(最大9T)に任意の大きさの一様な磁場勾配(最大10T/m)を重ね合わせることができる、専用の超伝導マグネットを導入した。またファラデー力の検出には、MITの強磁場施設で微小試料の磁化測定に使われたことのある可動電極キャパシタンス方式を発展させて、小型のキャパシタンス式ロードセル(一種のバネばかりで直径30mm、高さ15mm程度)を独自に製作した。これを高分解能の自動バランスデジタルキャパシタンスブリッジと組み合せることにより、希釈冷凍機の断熱セル中でマイクログラムオーダーの荷重変化が検出可能となった。 種々の試料(CeB_<6,> TmTe等)を用いた極低温磁化測定の結果、新しい知見が数多く得られた。CeB_6は約3.4Kで4重極転移、2.3Kで反強磁性転移を示すことで知られているが、その低温磁気相図はあまりよくわかっていない。(110)方向の磁化測定を行ったところ、約1.5Tの磁場でこれまで知られていなかった非常にシャープな磁化の飛びを0.5K以下で観測した。TmTeは常磁性の重い電子化合物と考えられているが、1K以下の温度でヒステリシスを伴う磁化の異常が見出された。これはΓ_8基底状態が約4Kで軌道整列し、低温ではそのドメインが磁場で配向する効果が見られたものと考えられる。
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