研究概要 |
前年に引き続き,レーザーアブレーション法によりチタン酸バリウムの薄膜を作製し,そのキャラクタリゼーションをおこなった.チタン酸ストロンチウム基板上にエピタキシャル薄膜が成長していることを4軸X線回折装置により確認し,その誘電特性を調べた.成膜直後の薄膜は酸素欠損のため伝導性がある.これを避けるため成膜後1000℃で酸化して,絶縁体化した.膜厚が400A程度では誘電率は温度変化に対しピークを作らない.膜厚が2000A程度の薄膜では,誘電率は温度下降とともに,鋭いピークを作らず,ブロードな山を作って立方晶から正方晶への相転移を示す.一方,正方晶から斜方晶への相転移に対応すると考えられる誘電率の鋭い大きな温度変化が観測されるが,斜方晶から菱面体晶への相転移ははっきりと観測されない.立方から正方晶へのブロードな相転移はいわゆる散漫型であり,エピタキシャル膜形成による,基板との界面での格子ミスマッチの影響が大きいと思われる.膜厚が厚くなるに従いこの影響はなくなる.この相転移は第2種相転移に近い相転移で,格子ミスマッチの不均一は相転移温度の不均一につながる.一方,正方晶から斜方晶への相転移は秩序変数に飛びのある第1種相転移であり,格子ミスマッチの不均一性は相転移温度に大きな影響が無いと考えられる.今後は,基板をチタン酸ストロンチウム以外のものに変えて格子ミスマッチの影響を減らして薄膜作製を試みて良質の薄膜を得て電子構造等の研究に進みたい.
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