研究概要 |
本研究は希土類化合物の伝導電子(正孔)のフェルミ面,サイクロトロン質量あるいは散乱の緩和時間を決定することにより,(1)磁気秩序をしたときのフェルミ面の性質かどう変化するか。 (2)強磁場下でメタ磁性の磁気相転移を起こしたとき,フェルミ面の性質が更にどう変化するのかを研究する。今年度はこれまで行っていたRIn_3(R:希土類元素)に対して,まだ測定例のない重希土類元素化合物に着手した。また重い電子系の典型物質であるCeRu_2Si_2も行った。得られた実験結果は次の通りである。 LaIn_3からGdIn_3までの軽希土類化合物に対しては,これまで開放型のタングステンルツボを用い,ヘリウムあるいはアルゴンガス中で高周波炉で引上げ法で単結晶を育成した。ところが重希土類化合物では蒸発が激しく,このような開放型では不可能であった。そこでTbIn_3に対してモリブデン・ルツボに真空封入してブリッジマン法で単結晶を育成した。この試料に対してドハース・ファンアルフェン振動を観測した。得られたフェルミ面は反強磁性状態を反映してLaIn_3とは全く異なっていた。 次に重い電子系のCeRu_2Si_2に対しては水冷の銅ハース上に原材料をおき,トライ・アーク溶解しながら引上げ法で単結晶を育成した。まだ研究は継続中であるが,この試料に対してサイクロトロン質量が120m_0のキャリアを検出した。バンド計算との対応からこのフェルミ面は大きは正孔フェルミ面であることが明らかになった。CeRu_2Si_2は約80kOeでメタ磁性を起こすが,フェルミ面がどう変化するのかを現在研究中である。
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