研究概要 |
二次元金属薄膜における超伝導-絶縁体転移即ち電子局在と超伝導との間の関係について調べるため、(1)膜の乱れを系統的に変化させる、(2)I-V特性等を測定して超伝導揺らぎを密度に測定する、(3)超伝導第二臨界磁場やコヒーレンス長等の超伝導パラメーターを求める、等の実験を行った。 急冷蒸着によって乱れのある膜を系統的に作製できた。高融点金属Nbの急冷蒸着によってはアモルファス膜、融点の低いInの急冷蒸着によってはグラニュラー膜が作製できることがわかった。前者は、超高真空中で約3A^^°という1,2原子層膜厚から膜厚を制御して作製できる。後者のIn膜は70〜100Kでアニールすることにより「つながり具合い」を変えることができる。装置の改良としては、5T超伝導磁石と1.5Kヘルウム冷却器を超高真空蒸着装置に組みこんだ。これにより、本科研費で購入したnVの分解能をもつ精密電圧測定器を用い、a-Nb膜の磁場中での超伝導ゆらぎ第二臨界磁場を測定することが可能となった。Hc_2は約60KG、超伝導コヒーレンス長は約90A^^°であった。また、Tc以上では超伝導複素秩序パラメーターの大きさの揺ぎ(ALメカニズム)が観測、膜厚により2次元から3次元に移行する様子がわかった。Tc以下ではI-V特性を測定することにより秩序パラメータの位相の揺らぎに帰因するKT転移が観測された。今後、さらに低温で超伝導-絶縁体近傍の超伝導膜において超伝導秩序パラメーターの大きさの揺らぎと位相の揺らぎがどのような関係にあるかが一つの研究テーマとなる。a-Nbの実験の一部は、1992年日本物理学会(東京大学)で発表、揺らぎ等の詳しい報告及びIn膜の結果は、1993年春の日本物理学会(東北大学)で発表の予定である。
|