研究概要 |
交付申請書で述べた研究実施計画にほぼ沿って研究を行うことができた。得られた成果の主な点を以下に箇条書きにまとめる。 (1)FexMni-xTio_3: 低温で反強磁性相とスピングラス(SG)相の共存するx=0.65について、強磁場磁化過程を磁場の掃引速度を変えて測定した。掃引速度が速くなると、磁化が磁場中冷却の値に向けて不連続なとびを起すことが観測された。この現象の解析から、SG系を磁場中冷却した状態は熱力学的平衡状態であることが強く示唆された。この他に、Mn高濃度側の試科の高磁場磁化過程にもSG系特有と考えられる現象が見出された。本研究は、これまであまり関心がもたれてこなかった高磁場下での測定が、SG系のスピン構造を理解する上で重要な知見を与えることを示した。 (2)NixMni-xTiO_3:弱い容易面型異方性をもつ濃度領域の試科(x=0.42,0.47)について、弱磁場磁化測定と中性子散乱測定を行い、面内スピン成分がまずSG凍結し、続いて垂直成分がSG凍結するという遂次凍結が生じることを示した。理論的には予測されていたが、実験で示されたのは初めてである。 (3)Fe0.2Mg0.8Ti0_3及びFe0.26Zn0.74F_2:弱磁場磁化測定から低温でSG凍結(凍結温度T_<SG>)をすることが示された。一方メスバウア測定から、かなり高温で反強磁性クラスターが形成され超常磁性的に揺いでいるが、その揺ぎの速さがT〜2T_<SG>でメスバウア分光の観測の時間尺度に入ってくる、そしてT=T_<SG>でクラスター間でSG凍結が起ることが明らかになった。 (4)MnxMg1-xTiO_3:弱磁場磁化測定から濃度ー奥度磁気相図の概略が明らかになり、パーコレーション濃度近傍でランダム磁場系からSG系ヘクロスオーバーすることが見出された。交換相互作用に競合の存在しないと考えられるこの系でSG状態が出現したことは、“フラストレーションがランダムに存在すること"がSG状態出現の必要条件であるかどうかが問われることになった。なお、この現象は(Fe,Zn)F_2系に次ぐ2例目である。
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