研究課題/領域番号 |
04452040
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
谷村 克己 名古屋大学, 理学部, 助教授 (00135328)
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研究分担者 |
中村 新男 名古屋大学, 工学部, 教授 (50159068)
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キーワード | フェムト秒分光 / 共鳴ラマン散乱 / 励起子格子強結合 / 自己捕獲励起子 / 光誘起構造変化 / アルカリハライド / CaF2 / SiO2 |
研究概要 |
本研究においては、励起子格子強結合系の緩和現象を物質凝縮の基本的性質の観点から物質論的に理解する為に、その現象が最も深く研究されているアルカリハライド結晶と共に、それとは異なる結晶構造、結合性を有しているCaF_2(SrF_2)、SiO_2をも対象として研究し、励起子緩和過程の支配要因と基礎物性との相関を明確にする事を目的としている。 今年度における研究実績は、以下の7点に要約される: (1)アルカリハライド結晶における電子正孔対の、新しい動的緩和過程の解明、 (2)共鳴ラマン散乱分光によるアルカリハライド結晶中の自己捕獲励起子の構造の確定、 (3)セシウムクロライド構造を有するCsC1CsBr中の自己捕獲励起子の光学的性質の解明 (4)SiO2結晶における1重項励起子の存在の発見、 (5)アモルファスSiO2中の2種の自己捕獲正孔による光吸収帯の発見と同定、 (6)CaF2中の自己捕獲励起子の共鳴ラマン散乱スペクトルの測定、 (7)3光子励起による励起子の緩和過程の特徴の明確化と1光子励起の場合との相関に関する研究、 以上の内、(1)、(2)、(3)の成果については、5編の論文と1編の総合報告で、すでに発表(発表予定も含む)している他、(4)については、その結果の一部を報告している。また、(4)、(5)、(6)の成果については、現在論文を執筆中である((1)の内容に関する論文1編は投稿中)。 しかしながら、主に超短紫外光パルスを安定かつ高出力で発生させる技術的困難さから、アルカリハライド結晶以外の物質に対するフェムト秒領域の緩和動力学に関する知見は、現時点では、未だ十分ではない。同期励起色素レーザ装置を用いて、いくつかの新しい現象を見いだしているもの、その再現性、固有性や他の研究グループの結果との整合性など、更なる検証、検討が必要な段階にある。現在、チタンサファイヤレーザを主体とした新しいレーザ装置を用いる事によって、パルス幅300fs、波長268nmのパルス光を、1パルスあたり100μJの高出力で発生させる事に成功しており、これによって、SiO2、CaF2結晶における励起子緩和のフェムト秒領域における精度の高い研究が可能となっている。現在精力的に実験を進めており、ここ数カ月で、明確な知見が得られると確信している。
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