研究概要 |
本年度に行った研究は,次のように要約できる. 1.Cu_3Al(+pd)合金β_1相の単結晶について,1軸圧力下におけるフォノン分散曲線の測定,3次弾性定数の測定を行った.前者については日本原子力研究所JRR-3Mの3軸スペクトロメーターTAS-1を使用,後者については奈良女子大学のマテック・システムを使用した.[110]TA_1フォノン分散曲線は[001]圧力により全体として振動数が減少するけれども,その変化は小さく,ソフト・フォノンのような異状は現れなかった.一方,3次弾性定数の測定結果はこの合金の非調和性が著しいことを示した.従って,この合金のプレマルテンサイト状態における格子不安定性はソフト・モード機構によるものではなく,非調和効果による,と結論される.この成果はMater.Trans.JIMに公表した. 2.AuCuZn_2合金β_1相の単結晶について,その高温相の性質を明らかにする目的で日本原子力研究所JRR-3MのTAS-1を使用し,Heusler相,B2相及びbcc相の[110]TA_1フォノン分散測定を行った.その結果,格子のソフト化はHeusler相の特徴であり,B2相及びbcc相は温度に対して正常な挙動を示すことが明らかになった.また,所謂2/3弾性散乱ピークの温度変化が,以前に我々が明らかにしたω-likeピークの挙動と極めて似ていることが明らかになった.これらの結果を5-th Int.Symp.Advanced Nuclear Energy Researchで公表する. なお,この合金におけるフォノン分散の圧力依存性の研究は現在進行中である. 3.数種のAuZn合金β_1相単結晶について,[110]TA_1フォノン分散の温度変化の測定を日本原子力研究所JRR-3MのTAS-1で行っている.研究は現在進行中だが,成果の一部及びその面間力解析の結果を上記国際シンポジュウムで公表する.
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