目的 有機金属、有機超伝導体の研究を促進するために、それらの良質な結晶を得ることが目的である。 本年度は「成長中の結晶の大きさと加えた電流値との関係」を明らかにすることを目標とした。 方法 成長中の結晶の表面積と原料の供給量とは比例するはずであるから、ファラデイの法則が成立するならば、成長中の結晶の表面積(S)と電流値(I)とは(1)式の関係にあるべきであるとの考えている。 S/I=一定 (1) この関係から、結晶成長のスタートからの時間(t)と電流値との関係の(2)式が(1)式より導き出せる。ただし、cは定数。 I=ct^2 (2) 結果 この(2)式にしたがってそれぞれ十分に精製したCuSCN 0.60mmol、KSCN 0.60mmol、BEDT-TTF0.15mmol、18-クラウンエーテル0.60mmol、を30mol%のエタノールを含む1.1.2-トリクロロエタン約60mlに分散させ、20℃、窒素ガス雰囲気下で電流値を0.1〜3μAまで次第に増加させて電解で結晶育成した。約1ヶ月後に、従来の方法(20℃、一定電流1μA)では得られない全く異なった外形を持った6角形の(BEDT-TTF)Cu(SCN)_2の有機超伝導体の結晶育成に成功した。これまでに得られた結晶は短冊型で表面が階段状であったが、今回の結晶は表面がフラットでかなり良質であることがわかった。現在物性評価を行っている。
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