研究概要 |
昨年度までの研究によって,一連の酸化希土類マンガンRMn_2O_5(R=Eu,Gd,Tb,Dy,Y)が低温で相転移を示し,低温相では,自発分極が存在する可能性があることを明らかにした.本年度には,引き続いて,R=Ho,Er,Ybの場合を調べるとともに,焦電気の測定による自発分極の直接的検証を行った.さらに,TbMn_2O_5の中性子回折による研究の準備を行った. 主要な研究成果は以下の通りである. 1)R=の場合に,焦電気電流を観測し,かつその符号が試料冷却時に加えた電場の方向によって,一意的に制御されることを確証した.この事実はこれらの酸化物が低温で強誘電体であることを示す.強誘電相転移温度はそれぞれ EuMn_2O_5 38 K,GdMn_2O_5 23 K,DyMn_2O_5 28 K,YbMn_2O_5 31 K,YMn_2O_5 40 K である.なお自発分極の温度変化は複雑であり,その起因は,R-Gbの場合を除いて,フェリ誘導性であると考えている. 2)HoMn_2O_5,ErMn_2O_5,YbMn_2O_5が低温で逐次的に相転移することを確かめた.特に,YbMn_2O_5の8 Kの相転移では,Yb^<3+>の磁気モーメントの整列と強誘電性の出現とが同時に起こると考えている. 3)これらの酸化物のうちで,あるものはネ-ル点(Mnイオンの磁気モーメントのヘリカル秩序配列の出現する温度)以下で,弱い自発磁化を持つことを確証した. 以上は,日本物理学会,日露強誘電体シンポジウムで口頭発表した.さらに,論文2編を印刷中,4編を執筆中である.
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