研究概要 |
1.同形の構造を持つ希土類マンガン酸化物RMn_2O_5(R=Sm-Luの希土類,Y,またはBi)の低温相転移を詳しく調べ,この系の酸化物が約40K以下の領域で一連の逐次相転移をすることを明らかにした.一般に,それらは以下の順序で起こる.(a)らせん磁気秩序の形成,(b)強誘電性自発分極の出現,(c)らせん磁気秩序の変形(スピン再配列),(d)希土類イオンの磁気モーメントの整列. 2.当初,EuMn_2O_5で予想した,(a)と(b)とが同時に起こる相転移の存在はまだ確認していない.しかし,二つの相転移のが近接した二つの温度に存在するようである.Euに次いでこのような転移の可能性が高いと考えていたYMn_2O_5では,二つの別の転移の存在することを確認した. 3.R=Gdの場合を除いて,自発分極の温度変化は複雑であり,その起因は,複数個の副格子のイオン変位によるフェリ誘電性であると考えている. 4.YbMn_2O_5の6Kの相転移では,Yb^<3+>の磁気モーメントの整列と付加的な自発分極の出現が同時に起こっていることを示した.この系では,きわめて異方的なYb^<3+>イオンの磁気モーメントの整列が,格子の変形とそれにともなう新たな分極を誘導すると考えている. 以上の結果は,印刷中を含め6編の論文で公表した.さらに2編の論文を準備中である. この研究の結果は,微視的な構造の解析によって,より直接的に検証する必要がある.目下,TbMn_2O_5単結品の中性子回折および精密なX線回折の実験を準備している.
|