弦理論はボゾンの場合、臨界次元は26次元であるが、非臨界次元の振舞いに興味が持たれている。一方、弦理論は二次元重力が物質と結合した場合も含み、これはランダム表面上に物質を置いた、ランダム表面上の相転移の問題と密接に関係している。マトリックス模型に基づいて、ランダム表面上のnイジング模型を考え、その場合のストリング感受率を研究した。この場合、相転移点で中心電荷はC=n/2となり、C>1の場合を容易に実現できる利点がある。摂動計算により、宇宙項に関して展開を行ない、8次までの摂動級数の結果から臨界指数を導出した。特にC>1の場合は、ストリング感受率は正の値になり興味ある結果が得られた。C=3の場合は、この模型がボゾンを表わすにもかかわらず、三次元イジング模型の比熱の臨界指数と同じ値を与えることが判明した。現在、フェルミオンの場合も考察中で今後更に研究を進めてこの関係を明らかにしたい。イジング模型に磁場がある場合も考察し、臨界指数及びスケーリング則を研究した。ギャップ臨界指数とストリング感受率との関係式を考察し、数値的にこの関係式がC>1で破れることを見い出した。弦理論では、タキオン及びディラトンの凝縮が重要となるが、これがマトリックス模型でどの様に影響するのか明らかにすることが重要である。また超対称性のマトリックス模型の実現も重要で、特にアンダーソン局在との関係で、局在長に対する臨界指数と二次元重力に現れる臨界指数との間の関係を今後明らかにしたい。また、くり込み群の手法によるストリング感受率の計算を行ない、定量的にも弦理論を理解し、局在問題への応用をはかりたい。
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