本研究の成果は大きく分けて2つの部分からなっている。1つは振動流体に関するエネルギーの流れや熱とエネルギーの間の変換に関しての一般理論(熱音響理論)を構築したことである。熱音響現象の多くにその合理的な説明を与えるのに成功した。この理論は熱音響自励振動の発生条件を理論的に示唆するばかりか最近注目されている各種のパルス管冷凍機や開発途上の共鳴管冷凍機などに有効的な説明や多くの示唆を与えるものとして関係する研究者(国外を含めて)に注目されている。他はTaconis振動で起こる非線形現象(衝撃波、カオス、準周期運動、3重周期運動など)が実験的に研究されている。複数の空間的に異なったモードの中立曲線が互いに重複する領域では周波数が異なった複数(2ないし3)のモードが同時に励起され、それらの間の非線形競合によりカオスが発生する事を実験で明らかにしている。特に安定した3重周期運動が非常に安定して存在することが実証されている。決定論的カオスであることを確かめるため相関次元およびエントロピーが時系列から直接決定されている。さらに熱的に励起された安定した周期軌道に周期的な外力を加えることにより準周期運動からカオス転移点近傍で成立する普遍則について実験的に示し、結果的に複雑な熱音響振動が非常に簡単な一次元の数学的な写像と同じ普遍的クラスに属する事が明らかにされた。Taconis振動を含めて熱音響振動の研究はまだ多くの未解決な問題を含んでおり応用性を含めて今後の大きな研究分野に発展する可能性が大きい。Tacoins振動のようなClosed Flow Systemの他に今回は及ばなかったがOpen Flow Systemで起こるReijke Tubeはまだほとんど研究されていない。非線形現象については時間的振舞いについて研究されたが空間的な問題は全く議論されていない。最近の時空カオスの問題とも絡み熱音響振動系で今後大いに期待される問題の一つである。
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