研究概要 |
球対称成層構造の地球モデルを仮定したときに、地震などの内力による変形と潮汐/表面荷重等の外力によって生じる変形との間に成立する相反定理を導いた。この相反定理を積極的に利用して、プレート境界で発生する巨大地震に伴う上下変位、水平変位及び重力ポテンシャル変化を計算する理論を定式化した。この理論は、1993年12月に開催された第8回国際地殻変動シンポジウムの場において発表され、高い評価を受けた。 次に理論式を実際にプログラミングし、過去に実際に発生した巨大地震(1964年アラスカ地震M=9.2)から期待される変動量を計算した。地震前後の上下変位の計算結果は、観測値をよく説明することがわかった。同時に地震に伴う重力変化についても、実測値とモデル計算値とは極めてよい一致を示した。重力ポテンシャル変化をジオイド高に換算して評価すると,数cmのジオイド高変化=海面高度変化が期待できることがわかった。 このアラスカ地震のシミュレーションの結果からわかるように、巨大地震前後に有意な海面高度変化が断層近傍で期待されるので、1992年に打ち上げられたTOPEX/POSEIDON衛星の海面高度データを取得し、予備的な解析を進めた。データ配布の遅れ等の不可抗力の為、よりくわしい解析は完了していないが、現在進行している計画を継続すればデータの蓄積と共に、興味深い結果が得られるのは確実である。
|