1. 理論的な研究 球対称成層構造の地球モデルを仮定したときに、地震などの内力による変形と潮汐/表面荷重等の外力によって生じる変形との間に成立する相反定理を導いた。この定理を積極的に利用して、プレート境界で発生する巨大地震に伴う上下変位、水平変位及び重力ポテンシャル変化を計算する理論を定式化した。 次に、1066Aという、球対称地球モデルについて理論式を実際にプログラミングし、過去に実際に発生した巨大地震(1964年アラスカ地震M=9.2)から期待される変動量を計算した。地震前後の上下変位の計算結果は、観測値をよく説明することがわかった。同時に地震に伴う重力変化についても、実測値とモデル計算値とは極めてよい一致を示した。さらに重力ポテンシャル変化を計算し、それが海面高度変化として検出できるか否かの検討を行ったところ、概ね数cm程度の海面高度変化が生じることが明かになった。興味深いことに、地震断層面上でのスリップの分布状況や、バリアーの有無などが、重力ポテンシャル変化を通じて海面高変化に反映されることが分かった。 2. 実測データの解析 フィリッピン海プレートとユーラシアプレートとの衝突境界である、伊豆半島北部の断層系の重力異常を解析した。とくに北伊豆断層系の断層運動が広域重力場に与える擾乱は顕著であり、プラスマイナス10ミリガルの4象限型パターンが見いだされた。これは、同断層の断層運動が水平横ずれが卓越し、累積すべり量1kmであることを考えると理論的にも説明がつくことが判明した。
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