研究概要 |
研究計画の初年度に当たり,まず広帯域地震計を東海大学海洋学部(清水市)に設置した。その際,これまでの観測点と異なり,センサーを埋設する方法をとった。これにより温度の日変化からくるノイズはほぼ完全に除去されていることがわかった。 この新設観測点を含め,現在,横浜市立大学と防災科学技術研究所の高性能地震計は,合計8地点(横浜,高尾,箱根,千葉,館山,中伊豆,都留,清水)で稼働することになり,南関東地域の高性能地震計観測網は一段と強化された。 一方,記録を解析するためのプログラムはほぼ完成した。その際,観測点ごとの地下構造の影響もかなり評価できるようになっている。これにより,収集されたデータはほぼ1日以内に解析され,断層メカニズム,地震モーメント,破壊継続時間などの震源情報が得られている。 これまでに得られた知見は次の通りである。 1.Moとτの関係:単発地震の多くは,近似的に三角形型の震源時間関数を持つ。この三角形の底辺τと地震モーメントMoとの間には Mo/τ^3=一定 の関係が成りたつ。このことは応力降下が第1近似的には地震の大きさによらないことを示している。 2.Mo/τ^3の深さ依存性・地域依存性:(1)プレート境界地震とプレート内地震の間には応力降下の系統的な差はない。(2)浅発地震の応力降下は小さい。しかし深さ40km以深では,応力降下はほぼ一定であり,顕著な深さ依存性は認められない。 3.プレート間地震とプレート内地震の相補関係:プレート内地震が起こっている地域ではプレート間地震は少なく,またその応力降下は小さい。一方,プレート間地震の応力降下が比較的大きいところでは,プレート内地震の数は少ない。
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