わが国の昭和基地では20年を超す連続的な水位変動の観測が行われおり、このような記録は南極大陸周辺においては唯一のものである。この記録を解析してその変動特性を季節変動を中心に調べた。昭和基地では水位が冬季(6-8月)に上昇して、夏季に低下するが、その10年間平均の季節変動を求め、その波形の歪を正確に記述することを試みた。最大水位は冬季に現れるが、その峯は非常にフラットであり、これに対して夏季の谷は非常に尖っている。また、秋口の水位上層の速度は速いが、春から夏にかけての水位降下の速度はゆるやかである。また、季節変化の波形は年によって著しく異なることが示された。この特性は、中緯度のわが国周辺等とは著しく異なっている。本年度では、関連すると思われる周辺の気象・海象との対比を通しての原因究明は進んでいないが、沖合いの海流の変動、海洋中の塩分濃度と表層厚の変化、気圧・風速等の気象要因との相関を見ることを試みた。今までに見出された現象で、相以の季節変化を示すのは南極に卓越するカタバ風だけである。また、季節変動より短周期の変化特性についてもスペクトル解析を中心に調ベ、振幅は年々変動するが、15日と40日周期の変動が常に卓越することが示された。40日程度の短周期変化はカタバ風についても見られる。しかし、大陸斜面に卓越するカタバ風が、どのようにして水位に影響するのか問題である。ただ、沿岸の観測点でもマラジョージナヤ等では、同様の季節変化を示しており、2年次以降にこの点の解明を行うことを予定している。
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