第1・2年次に明らかにしてきた昭和基地における水位変化の特殊性、すなわち冬期(6-8月)に水位が上昇し、夏期に下降するという特性に付いて、さらに解析を進めると共に、その原因の究明に努めた。類似の現象を示す北太平洋亜寒帯の海況についても検討したが、特にわが国オホーツク海沿岸や北海道東岸親潮域については、海洋表層の水が冬期により低温だがより塩分の少ない水に置き替わることによって説明できることを示した。しかし、最近の昭和基地沖の冬期の新しい海洋観測結果からは、このような表層塩分の効果のみでは昭和基地の水位変化特性を十分に表し得ないことが分かった。水位と類似の年変動のパターンを示すものに、南極大陸に卓越するカタバ風があることを先年度までに見出しているが、不思議なことにそれが最も卓越する大陸斜面部では、水位に見られるようなパターンの歪が見られず、海岸域の風速変化に見られないことが分かった。このことは、純粋のカタバ風ではなく、それと相関を持つ洋上風が海況・海流変動に結び付いていることを示唆している。関係する洋上資料の収集に努めたが、著しい水位の年々変動と比べ得る資料は少なく、明確な結論は得られなかった。しかし、亜寒帯海洋との比較検討を通して、気候変動との関連が深い北太平洋中層水の生成機構に関係すると思われる新しい知見を得ることが出来た。これを含め、3年間の成果を最終報告書として取りまとめた。
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