研究概要 |
平成5年度に計画されている三重県尾鷲地域特別観測のための予備調査として,紀伊半島,特に南東沿岸部で大きな降雨量が観測された過去の事例について(1985年の事例を中心に),その領域の雲頂高度などの雲の特徴と降雨量との関係を,静止気象衛星データと地上雨量データを用いて調べた。それと共に,気象ゾンデデータなどを用いて,この地域の雲への水蒸気流入の特徴を調べ,地形効果により降雨が強化・集中化する時の大気状況を整理した。 九州西部の沿岸は,南西風が卓越する時に,地形の効果も加わりしばしば豪雨が形成される。尾鷲地域の豪雨と比較するため,今年度は,当研究所のRHIレーダを九州の諫早地域に移動設置して,西の海上から雲仙岳付近に上陸し発達する対流性降水雲の変質過程を調べた。 尾鷲地域で行う2台のドップラーレーダによる観測の準備として,地形性降水雲,対流性降水雲の3次元的なレーダエコー構造,気流構造を2台のドップラーレーダにより有効に観測する手法,解析する手法を検討,開発した。伊吹山周辺の降水雲について観測を行い,山岳の周辺の局地的な気流を受けて背の低い雲が発達,変質,衰弱する過程をドップラーレーダのデータの解析により調べた。地形の影響を受けている降水雲の観測方法,解析方法について有益な知見を得ることができた。 レーダ観測のみでは,地形効果による降雨の強化,集中化機構の解明には限界があるため,紀伊半島を対象域に選び,地形の効果により局地的な風が各地域に発生する過程を調べる3次元数値モデルを開発した。計算領域の大きさ,格子の細かさなどの影響を調べ,モデルが妥当な結果を示すことを確認した。このモデルに降水雲を含む方法を検討している。
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