研究課題/領域番号 |
04452071
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
武田 喬男 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 教授 (60022604)
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研究分担者 |
斉藤 和雄 気象研究所, 予報研究部, 研究官 (70391224)
加藤 内蔵進 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 助手 (90191981)
藤吉 康志 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 助教授 (40142749)
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キーワード | 積乱雲 / 地形性豪雨 / ドップラーレーダ / 尾鷲 / 数値モデリング |
研究概要 |
平成5年度は、降雨への地形効果が大変顕著である三重県尾鷲地方に、当研究所の豪雨観測用2台ドップラーレーダシステムを移動設置し、主に7〜9月の期間、梅雨前線、台風などに伴い局地的に形成される強雨の観測を行った。さまざまな大気状態に対応する事例が観測されたが、特に興味深い観測事実は、下層で南東風が卓越する時、海洋上で発達したバンド状積乱雲群が上陸する際、積乱雲からの降雨が上陸前と上陸後に2段階の強化を示したことである。ドップラーレーダシステムにより、その変質過程における積乱雲の3次元的レーダエコー構造と3次元的気流構造が詳細に観測された。また、上陸後の積乱雲の降雨の強化は、台風時のように下層で風が強い時は、風が弱い時に比べて、より内陸で起こることが示された。 一方、紀伊半島上で山岳などの地形の影響の下で形成される気流の3次元構造を、数値モデルを用いてシミュレートし、風速、成層安定度などの大気条件が気流構造におよぼす効果を調べた。その結果、東成分をもつ風が下層で吹く時、北東から南西に走る山系の影響により、山系の南東側に上昇気流が形成され、強風時には弱風時に比べてそれがより内陸側に形成されること、風速によってはさらにそれより風上側の海洋上に別の上昇気流域が現われることが示された。平成5年度に用いた数値モデルは、雲・降水が形成されないdry modelであるが、数値モデルによりシミュレートされた上昇気流域で移動してくる現実の積乱雲の降雨が強まることが多いことが明らかにされた。現在、雲・降水も形成される数値モデル(wet model)により紀伊半島上の気流構造をシミュレートしながら、ドップラーレーダシステムで観測されたさまざまな事例について、地形効果による降雨の強化、集中化過程を総合的に解析している。
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