研究概要 |
1.赤道下部成層圏の単周期擾乱に関し,過去2年間に実行してきたシンガポール気球観測データ解析に集約を行なった.周期3日以下の擾乱は,その卓越時期が平均東西風の準2年周期振動(QBO)と良く対応していることが明らかとなったことのみならず,その擾乱の力学的特性として,温度と東西風成分のコスペクトルがQBOの加速減速に合わせて符号を変えていることを新たに見出し,その理論的解釈も加えて論文を印刷公表した. 2.UARS衛星に搭載された測器の一つCLAESの温度場データを(観測期間は1992年1月から1993年4月)用いて,下部成層圏赤道ケルビン波の活動性と背景風との関連ついて調べた.その結果,期間の前半に準2年周期振動の風系が東風のときケルビン波の活動性は活発で,西風に変わるにつれて活動性が急速に減衰していくことがわかった. 3.三次元全球大気循環モデルを用いて,熱帯に局在した加熱によって励起された波動の中層大気中での伝播に関する数値実験を行なった.線形解析で得られた各種大気振動を下端境界条件として与え,静止大気中の伝播をコントロール実験として,理想化した春秋分の帯状風に東風シア-期または西風シア-期のQBO帯状風速場を重ねた基本場ではそれぞれの波動の伝播がどのような影響を受けるかを調べ,線型波動伝播理論によるWKB的な解釈でこまで説明できるかを検討した. 4.QBOの室内実験を行い,いくつかのケースで内部重力波によって平均流が形成され,さらにその流れの向きが1〜2時間程度の周期で反転を繰り返すことが確認された.また,この実験において波を励起する境界付近のごく狭い範囲の成層状態が波の伝播,ひいては平均流の形成に非常に大きな影響をもっていることが確認された.
|