研究概要 |
赤道域下部成層圏に卓越する平均東西風の準2年周期振動(QBO)に関与する波動擾乱としては,従来,ケルビン波とロスビー重力波が良く知られていたが,より短周期の重力波と考えられる擾乱は観測的に殆ど知られていなかった.この研究では,15年間にわたるシンガポールの気球観測データを用い,種々のタイムフィルターを通した水平風成分,温度のバリアンス及びクロススペクトル解析を行って,周期2日程度の短周期擾乱がQBOと有意な相互作用を持っていることを明らかにした. UARS衛星に搭載された測器の一つCLAESの温度場データを用いた解析をおこない,これまで定点ラジオゾンデ観測から断片的にしか知られていなかった下部成層圏赤道ケルビン波の検出に衛星データを用いて初めて成功した.さらにこの活動性が準2年周期振動にともなう背景風の変動と密接に関連していることがわかった. 熱帯域対流圏に局在した非定常な加熱強制に対する大気の応答を理論的数値実験的に調べた.球面上の静止大気の応答を線形化したプリミティブ方程式を変数分離法で解くことにより求め,その強制パラメータに対する依存性を明らかにした.また,三次元全球大気循環モデルに最新の中層大気用放射コードを組み込み,気候学的な帯状平均場の応答に関する数値実験を行なった.特に,QBO帯状風速場の東風シア-期または西風シア-期で伝播特性がどのように変わるかを明らかにした. Plumb and McEwan(1978)によるQBOの室内実験と,ほぼ同じ大きさの水槽を製作し,追試を行った.その結果,重力波による平均流の形成およびその反転を確認した.反転の周期はほぼ1-2時間程度であるが,これは波の励起源近くのこく狭い範囲の成層状態に非常に敏感であり,その成層の如何にによって大きく変わり得ることがわかった.
|