研究課題
一般研究(B)
様々なオゾンの変動要因の中で、大気の運動による効果、即ち輸送過程を解明することを中心課題とした。(1)南極昭和基地での、オゾン全量や鉛直分布の観測結果をもとに解析を行い、オゾン変動の様態を明らかにした。1980年代に入って顕著になった春季オゾンの減少は、90年代にもさらに強まり、安定的に低いオゾン全量を続けている。高度分布では、オゾンホールの強まった時期、中心的な高度の14〜19kmではオゾンが完全に破壊されてしまうことが明らかになった。90年代の特徴として、成層圏下部のオゾン減少が顕著で、オゾンホール解消以降も低い値が続いている。極渦の形態や、その解消など、大気循環場、輸送過程の変化が予想される。(2)成層圏オゾン変動解明の一歩として、力学と化学過程を分離すべく、流線沿いに並んだノイマイヤー、マイトリ、昭和等の基地で、オゾンゾンデの同期観測を行った(1993年9月初旬の10日間)。観測値と気象客観解析データに基く流線跡解析との比較等から、極渦周辺域での変化の特徴が明らかにされた。(3)ある空気塊に沿って運動しながら、その変化をさぐるという、即ち、ラグランジェ的観測を行う、極域周回気球(PPB)実験の結果の解析を行った。1991年9月に実験を行った結果の解析で、極渦の中でのオゾンとエアロゾルが逆相関を示すことが確認された。また、極成層圏雲(PSCs)の高い値も観測された。(4)対流圏オゾンとして、昭和基地地上でのオゾン変動の解析を行った。成層圏オゾンとは異なって、冬に濃度が高く、夏に濃度が低いという特有な季節変化が明らかになったほか、春季、数日から10日以内で、オゾン濃度が急減する現象がとらえられた。これらは、成層圏と対流圏の間の大気交換、対流圏上層での輸送、さらには地表近くの下層大気の海からの輸送変質が効いた結果であるとの推定がなされた。
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