研究概要 |
平成4年度8月に山梨県甲府市北西,甲斐駒ヶ岳南方の糸魚川ー静岡構造線に沿う地域で,約20間現地調査が行われた.特に,甲斐駒ヶ岳花崗岩最南部焼地蔵花崗岩体に沿って発達する中新統桃の木層起源の接触変成帯(藤本ほか,1965)について,詳細な地質調査および試料採集を行い,その後実験室で薄片観察および石英c軸ファブリック測定を行った.その結果,(a)花崗岩に接する幅200mの桃の木層がマイロナイト化している.(b)マイロナイトフロント付近では石英粒子の伸長は著しいものの,動的再結晶は殆んど認められない.一方,花崗岩に近接する部分では動的再結晶および結晶成長が著しい.(c)マイロナイト化した砂岩中の石英c軸ファブリックはフロント付近ではtype-Iクロスガードルを示すが,花崗岩に近接する約100m以内からtype-IIクロスガードルに転移する.このファブリック転移の位置は黒雲母のアイソグラッドとほぼ一致している。 Gas-Flow顕微鏡加熱・冷却装置(米国Fluid社製),偏光顕微鏡(Nikon・OPTIPHOT2-POL)およびビデオモニター(SONY)を導入し,平成5年度1月より本装置を稼働させることが可能となった.これまで,甲斐駒ヶ岳地域中断統桃の木層の砂岩中の砕屑石英粒子,および三波川変成帯汗見川地域黒雲母帯の石英脈中のヒールドクラック(healed crack)に沿う流体包有物の充てん温度が数試料について調べられた.一つ判明した興味深い事実は,甲斐駒ヶ岳地域の試料中の流体包有物の充てん温度は200〜250℃の狭い範囲に集中する一方,三波川帯の石英脈中のものは試料によってかなり充てん温度が異なり,一つの試料内でも例えば250から400℃以上と大きくばらつく.この事実は,甲斐駒ヶ岳地域のクラックが一回の構造運動で出来たものである一方,三波川帯の石英脈中の流体包有物の充てん温度のばらつきは上昇・冷却過程で何度も構造運動を被り流体包有物の再充てんを繰り返した結果生じたと解釈される.
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