研究概要 |
本年度は、まず8月に20日間山梨県北巨摩郡武川村において詳細な地質調査および試料採集を行った。その結果、本地域北部(下来沢、黒沢川、石空川)に分布する、東西方向で、西に60-70度で急傾斜するしゅう曲軸をもつ、半波長約2kmの馬蹄形向斜構造の詳細をより明確にすることが出来た。本地域の層序の詳細は研究成果報告書に記載されるが、今回の地質調査で走向方向の岩相変化がかなり著しいことが明確になった。すなわち、本地域の桃の木亜層群の最下部を構成する泥岩がち砂岩泥岩互層(砂岩はブ-ディン化している)は、本地域北部の黒沢川左俣から下来沢にかけては厚さ200m程度の薄層として良く連続しているが、上来沢以南では本層は急激に厚層化し厚さ1000m以上となっている。一方、本地域北部に分布する厚さ1500mにも及ぶ珪質頁岩(主として酸性凝灰岩質頁岩)と泥岩の互層は上来沢以南では殆ど消滅しており、数層の10m程度以下の薄層となっている。すなわち、岩相は急激に南部に向かって粗粒化(砂岩優勢化)する。 砂岩層を構成する変形石英砕屑粒子中の変形ラメラ、キンクバンドおよびヒールドマイクロクラックを用いた古応力場解析を昨年度に引き続いて行った。昨年度までの段階で4試料についての解析を終了したが、これは竹下・伊勢(1994)およびTakeshita(1995,in press)に公表した。今回、6試料の砂岩について新たに古応力場解析を行った。詳細は研究成果報告書に記せられるが、砕屑石英中の変形微細構造が砂粒堆積後に新たな造構応力場のもとで獲得されたものであること、また変形微細構造から推定される古応力場は桃の木亜層群しゅう曲形成時の応力場を反映していることが、個々の変形砂岩層の示す古応力場と採集された砂岩のしゅう曲構造上の位置との対応関係から結論された。
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