研究概要 |
化学研究費交付者は、主として山梨県北巨摩郡武川村に分布する、中部中新統桃の木亜層群をモデフィールドにして本一般研究Bを遂行した。具体的な成果は研究成果報告書に記載されるが、以下にその要点を箇条書きにする。(1)本地域に分布する桃の木亜層群の層序としゅう曲構造について、従来の研究に加えて数多くの新知見を得た。(2)桃の木亜層群と甲斐駒・焼地蔵花こう岩の境界は従来糸魚川-静岡構造線と考えられて来たが、この境界は貫入境界であることが明らかとなった。また、焼地蔵花こう岩に沿ってはマイロナイト化した桃の木亜層群起源の接触変成帯が存在し、これは花こう岩貫入に伴う壁岩の塑性変形を示していることが明らかとなった(竹下・伊勢,1994)。(3)桃の木亜層群の砂岩を構成する砕屑石英粒子中に発達する変形ラメラ、キンクバンドおよびヒールドマイクロクラックなどの変形微細構造を解析し、変形砂岩層中の古応力場を求めた。その結果、古応力場は桃の木亜層群しゅう曲形成時の古応力場を反映していることが明らかとなった(竹下・伊勢,1994:Takeshita,1995 in press)。(4)石英砕屑粒子中のヒールドマイクロクラックに沿う流体包有物の充填温度は200-260度を示し、圧力補正を考慮すると石英が300度程度で変形したことが明らかとなった。さらに、交付者は四国中央部三波川帯のしゅう曲構造を切る、エシュロン状石英脈中の変形微細構造と流体温度を解析した。その結果、(1)ヒールドマイクロクラックは3つの主応力(σ1,σ2およびσ3)軸に垂直に形成されており、直交パターンをなす。(2)流体包有物の充填温度は150-350度と広い範囲に及ぶが、最高温度グループは300-330度の充填温度を示し、圧力補正を考慮すると、400度程度の高温熱水・微小破壊活動が三波川帯上昇直後に生じたことが明らかとなった。
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