研究概要 |
本研究において年代測定に供する地質学試料はゼオライト相程度の低度変成岩の極微細変成白雲母鉱物である。この種の極微細鉱物の分離濃集技術を確立した。それを使って微細白雲母を分離濃集しK-Ar年代測定を実施した。それによって,変成白雲母鉱物は2ミクロン以下サイズであることが分かった。それより大きいサイズでは化石年代より古くなることがあるので砕屑性白雲母が混入する可能性がある。そこで砕屑性白雲母が年代にどのように影響するかの検討も実施した。ジュラ紀の付加体の中から砕屑性白雲母を見つけその年代への影響とそれを軽減させる方法を検討した。 この種の微細白雲母は断層破砕帯でも生じているし,熱水変質火山岩中にも生じている。付加体の低変成度岩のそれと比較する意味でそれらの鉱物学的年代学的研究も行った。断層破砕帯の微細白雲母は付加体低変成度岩中のそれと比較して結晶度が低いことが分かった。しかし,その場合でもK-Ar年代学的に有効であることも明らかになった。 極微細鉱物の分離濃集には量が限られることから極微少量でのK-Ar年代測定技術を確立する必要がある。そのために,レーザーによるAr抽出装置を開発し,その基礎実験も実施した。将来Ar-Ar法による年代測定を考え,段階加熱によるアルゴン抽出実験を行った。それによって,500-1500度の温度範囲で相対誤差1度で温度制御が可能となった。 付加体の逆転温度構造の回復速度の数値実験を行い,島孤-海溝系の造山プロセスの新しい制約条件を検討した。それによって,付加体低変成度岩は海洋プレートの定常的な沈み込み作用で成長するが、高圧変成岩の上昇は海嶺の沈み込み等の非定常的に起こる事件によって生じる可能性が示唆された。
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