今年度においては、北海道中軸帯の上部白亜系遠別層群、および九州天草地域の中部〜下部白亜系御所浦層群を主な対象として古地磁気測定試料を採取した。試料採取は、携帯形ガソリンエンジンドリルと特殊開発の硬質岩石用ダイヤモンドビットを使用した。この結果、露頭条件の許す範囲で、特に大きな層序間隙をあけることなく、数mから数10mの層厚間隔で試料を採取することができた。採取層準は総計100層準以上に及び、これらの試料は高知大学古地磁気研究室の超伝導磁力計で測定中である。これまでの予察的結果によれば、遠別層群中には、白亜紀後期のSantonian/Campanian階境界に対応するChron34/33r、及びCampanian/Moastrichtan階境界に対応するChron33/32rに相当すると思われる磁化極性変化の存在することが判明した。今後の測定作業と化石層序学的検討の進展につれ、Moastrichtian階のChron32r以降の逆帯磁層準が見い出される可能性が高い。なお、こうした試料から安定な残留磁化成分を柚出するため、本研究では大型電気炉を備えた特殊熱消磁装置を使用して消磁作業の効率化を計った。 これらの古地磁気層序学的研究と並行して堆積環境推定のためのテクトニクス研究も行なった。これらは、北海道中軸帯と九州南部の中新世堆積岩を対象としており、白亜紀以降の堆積造構場を推定する上で重要な新知見を得ることができた。こうした研究の一部は、いくつかの学術雑誌に公表される予定である。
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