研究概要 |
本年度は,昨年度の研究成果を踏まえ,SI-(100)GaAs基板上にMBE成長したGa_2Se_3のフォトルミネッセンス(PL)測定を行なった.Ga空孔が規則配列したGa_2Se_3において,610nm付近のブロードな発光を観測した.また,このPLスペクトルの偏光特性において,[011]成分の発光強度に比べて[011]成分の発光強度が大きいことが明らかになった.これは,電子遷移の確率が[011]偏光に対する方が大きいことを意味しており,[011]偏光に対して[011]偏光の方が吸収係数が大きかったことと一致している. また,透過型電子顕微鏡(TEM)により基板界面付近の構造を評価したところ,(011)断面にのみ,基板界面付近に(111)面上に多数の欠陥が観測された.これは,通常の積層欠陥とは面間隔が異なっており,層状のGaSeと類似のSe-Se結合により形成されていると考えられる. さらに,この様な欠陥の密度を源少させる目的で,ZnSeバッファ層上へのGa_2Se_3の結晶成長を試みたところ,Gs_2Se_3の成長温度が540℃以上のとき,ZnSe層とGa_2Se_3層の相互拡散により混晶化がおこり,欠損性カルコパイライト構造を有するZnGa_2Se_4がエピタキシャル成長することを見出した. また,層状構造を有するGaSeのMBE成長も試み,(111)GaAs基板上に成長温度350℃でc軸配向したGaSeのエピタキシャル成長に成功した.しかし,十分な結晶性は得られず,PLは観測されなかった.結晶性改善のために成長温度を上昇させると,ファンデルワールス力を介した成長であるため再蒸発してしまい,膜の成長は見られなかった.そこで,(100)および(112)GaAs基板を用いて,成長温度540℃でGaのビーム強度を増加させたところ,基板と共有結合を介して成長し,結晶性が向上して2.01eVのDAペア発光が観測された.
|