スメクティック液晶における反強誘電性出現の原因を明らかにするため、主に2つのアプローチによって実験を行った。第1はコノスコープ像観察による層の同定、第2はX線回折による層構造解析である。 これまで、不斉部を有する炭素鎖の長さを変化させると炭素鎖長の偶奇に従って反強誘電相の現れるもの、強誘電相の現れるものが交互に変化する傾向があることが分かっていた。これらの系に関しX線回折実験を行い、スメクティック層間隔の温度変化を精密測定した。この結果、反強誘電性の強い液晶ほど層間隔が短くなる傾向のあることが分かった。このことは反強誘電性の発現に関する2量体化の効果を暗示するものである。さらに、層間隔に対応する高次の回折ピークを精密測定し、層の秩序度を算出し、これまでの反強誘電性を示さないスメクティック液晶と比較して、層の秩序が非常に高いこと、また、強誘電‐反強誘電相転移点で相の秩序度が不連続に増加することを見いだしている。この測定も隣接層間での分子2量体化を暗示している。 コノスコープ像観察によって、新しく発見された反強誘電性液晶にリエントラント反強誘電相の存在を見いだした。また、さまざまな副次層を持つ反強誘電性液晶混合物の電場下でのコノクコープ像観察によって電場‐温度相図を作製し、さまざまな中間的な相が現れることを見いだした。その順序は常に一定であり、強誘電的および反強誘電的相互作用の競合により悪魔の階段として知られる無限の副次相が次々と現れるものと解釈した。
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