陽極化成法によって作製される多孔質シリコンを、熱酸化、陽極酸化およびプラズマ酸化し、構造を安定化した後、高速イオン散乱法、反跳粒子検出法、赤外吸収分光法、断面透過電子顕微鏡、フォトルミネセンスやカソードルミネセンス法などにより種々の観察・評価を行った。その結果、 1.熱酸化多孔質シリコン薄膜から、従来赤色発光のみしか観測されていなかったが、本研究で初めて青緑色の発光が得られるようになった。また、高温で熱酸化した膜中にも水素が相当量(>10at%)存在することが判明した。 2.陽極酸化膜の酸化処理前の化学処理依存性を調べることにより、陽極化成中の化学エッチングの重要性が示され、発光(緩和)過程が吸収(励起)過程に依在しないことが明らかとなり、陽極酸化した試料の発光機構には局在した発光センターが含まれることが判明した。 3.一方、ECRプラズマ法により酸化した多孔質シリコンからの可視発光が生じる実験パラメータを詳細に調べ、発光を呈する試料の作製が容易になった。また、プラズマ酸化多孔質シリコンに、金の薄膜をつけ、P型Siの基板との間に、電流を流すことにより、整流性の存在と順方向時のみの発光現像を観測した。これは絶縁物である酸化膜が微結晶シリコン中に存在しても、電気的な励起が可能なことを示すもので、本研究により初めて示された。 以上の成果をふまえ、次年度(最終年度)では、各種実験パラメータの最適化を行い、より高効率の発光試料の作製を目指すとともに、発光機構の解明にも努める。
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