SiウエーハをHF系水溶液中で陽極化成して得られる多孔質シリコン(PS)は強い室温可視発光を呈するが、構造不安定性が問題である。そこで本研究では、陽極酸化法やECRプラズマ酸化法に基づく界面制御により、PSの微細構造の安定化を図った結果、諸特性が改善されることを見出した。陽極酸化初期過程では、酸化時間とともに、PLおよびPL励起ピーク位置がある程度ブルーシフトするが、PLピークのブルーシフトは飽和する。これは、PS試料中の微結晶Siサイズの酸化によるサイズ縮小効果、つまりバンドギャップの拡がりと同時にPLセンターの出現を意味する。室温で長波長側にPLピークを持つ試料のPLピークエネルギーの温度係数はバルクSiのバンドギャップの温度係数とほぼ同じ値になるのに対し、飽和位置に室温PLピークがある試料では、その温度係数は数倍の大きさとなった。後者の場合、ピーク位置が温度に殆ど依存しないピークが不連続的に幾つか存在し、温度の低下とともに熱的緩和過程が減少し、より高エネルギー側のピークが相対的により大きく増大するため、結果的な合成ピーク位置が上記の大きな温度係数を与えることが判明した。一方、浅いPN接合を持つPS試料から、観測されるELスペクトルは陽極酸化処理により安定し、注入電流が増加すると発光ピーク位置が不変のまま、発光強度が増加する。発光強度の電流密度依存性は、1次以上のベキ乗で表わされ、高電界によるホットキャリアの効果が示唆される。また、ECRプラズマ酸化した試料の場合には、水素プラズマ処理により酸化膜中の欠陥が補償でき、ELスペクトルを安定化できることが判明した。
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