本年度は、以下のような成果を得た。 1.銅フタロシアニン太陽電池の高効率化:我々の最終目的は、太陽光による表面プラズモン励起にあるが、その予備実験として角度固定・波長スキャンATR法による表面プラズモン励起の実験を行った。その結果、550nm付近で効率が約9倍にもなる事を見いだし、その前後の波長でも効率の増大を認めた。このようなデーターに基づいて、キセノンランプの白色光による表面プラズモン励起を試みたところ、光電変換効率が2倍程度に向上する事を見いだした。以上の実験により、太陽光励起下では最低2倍程度の効率向上が得られることが確実となった。 2.伝播型表面プラズモンと局在型表面プラズモンの相互作用:アルミニウム表面に銀超微粒子を接近させた試料を作製しATR測定を行ったところ、両者の相互作用によりアルミニウム表面の伝播型表面プラズモンの分散曲線の異常、散乱光の増大等の現象を見いだした。これにより、銀微粒子の局在型プラズモンの励起によりアルミニウム表面上の伝播型プラズモンの励起が十分可能であることが示された。 3.配向性有機超薄膜の作製と光電物性:アルカリハライド単結晶上に、フタロシアニン系、ポリフィリン系有機超薄膜を蒸着し、高分解能電子顕微鏡観察、走査トンネル顕微鏡観察を行い、かつ光応答性を調べた。一般的に、配向性が良い試料ほど、光電変換効率が高い事を見いだした。
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