研究概要 |
一般に、金属表面には表面プラズモンポラリトン(Surface Plasmon Polariton,SPP)が存在する。このSPPに付随する電磁場は、表面から遠ざかるに従って振幅が減衰し、表面に沿っては平面波として伝播するという表面波の性質をもっている。SPPが励起されると、金属表面近傍に非常に強い電磁場が誘起され、種々の増強現象が期待される。本研究では、このような増強現象を光電変換素子の効率向上に応用することを試みた。光電変換媒体としては、薄膜としての機能性の高さから有機薄膜を用い、SPP励起による効率向上の面および、有機薄膜そのものの光電物性の改善の両面から研究を進めた。通常の全反射減衰法によるSPP励起の実験では、有機薄膜太陽電池の変換効率が、SPPを励起しない場合に比較して8倍にも増大することが実証できた。さらに、銀超微粒子層を使った新しいSPP励起の方法を提案し、実際にこの方法でSPP励起が可能なことを示した。この新しいSPP励起法では、銀超微粒子の局在型表面プラズモンと金属表面上の伝播型表面プラズモンの相互作用によりSPP励起が可能になったと考えられる。種々の有機薄膜および素子構造に対して、光電変換特性を測定することにより、有機薄膜の微視的構造を始めとして、高効率光電変換素子を実現するうえでの重要なパラメーターを知ることができた。以上の様な成果は、実用に耐え得る高効率有機薄膜光電子素子の設計に対して、重要な指針となるであろう。
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