研究概要 |
本研究は,各種薄膜物質の軟X線光学定数の測定収集や光学超薄膜形成の基礎過程等の基盤的研究のうえに,短波長用多層膜反射フィルター,多層膜偏光子,多層膜位相子,などの軟X線用新機能性光学素子を開発することを目的とする。 軟X線光学定数の測定では,超薄膜試料の表面粗さの軟X線反射率への影響を系統的に調べた。この結果,表面粗さの空間周波数スペクトルと光源の可干渉距離とに相関があることを明らかにできた。軟X線の反射に関する理論の精密化に向けて重要な成果である。 光学超薄膜の成膜および軟X線多層膜成膜に関しては,in-situエリプソメトリー手法によって,成膜中に,界面の成長モードの変化が,複素誘電率の変化として検知できることを見出した。また,この手法によって,超薄膜の界面では,一方の界面粗さを他方が平滑化するプロセスと,界面で起きた化合物形成が,十分の数nm程度で停止するプロセスのどちらかが一般的であることがわかった。 短周期多層膜の開発では,周期厚4.70nmから5.34nmのRu/B_4C,Mo/B_4C多層膜をマグネトロンスパッタ法で成膜し,光子エネルギー167.3eVから186.2eVの軟X線に対して,入射角45°で,16%から18%のS偏光反射率を得ることができた。これらの多層膜は偏光子として使用できる。 開発した偏光素子を用いて,光子エネルギー97eV付辺で,本格的な軟X線エリプソメトリー測定によるMo超薄膜の複素振幅反射率比 Rp/Rs=tanψexp(iΔ)の入射角依存性の測定に成功した。現在,理論の検証が進行中である。
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