本研究では、各種薄膜物質の軟X線光学定数の測定収集や光学超薄膜成膜の成長基礎過程等の基盤的研究のうえに、周期厚さ6nm以下の界面の平滑な軟X線多層膜形成を実現し、短波長用の軟X線用新機能性光学素子を開発することを目的とする。2年間の研究でこれらをほぼ達成できた。 軟X線光学定数の測定では、反射率の入射角依存性測定から解析する方法を確立し、C、Mo、Ru、Rh、W、Pt、Au、BK7ガラス、溶融石英ガラスについて、光子エネルギー60eVから900eVまでの間でデータを報告できた。また、超薄膜試料の表面粗さの軟X線反射率への影響を系統的に調べ、表面粗さの空間周波数スペクトルと光源の可干渉距離とに相関があることを明らかにした。今後も引続き、光学定数の測定を継続する。 光学超薄膜と軟X線多層膜成膜の基礎過程研究では、in-situエリプソメトリー手法が、成膜プロセスのモニターとして有効であることを示した。特に、超薄膜の多層界面では、一方の界面粗さを他方が平滑化するプロセスと、界面で起きた化合物形成が十分の数nm程度で停止するプロセスの二つが一般的であり、それぞれの成長モードが、明瞭に検知できた。 短周期多層膜では、周期厚4.70nmから5.34nmのRu/B_4C、Mo/B_4C多層膜をマグネトロンスパッタ法で成膜し、光子エネルギー167.3eVから186.2eVの軟X線にたいして、入射角45度で、16%から18%の反射率を得ることが出来た。 偏光能98%以上の高性能な軟X線偏光子および透過型軟X線位相子を開発し、それらを用いて、光子エネルギー97eV付近で、本格的な軟X線エリプソメトリー測定によるMo超薄膜の複素振幅反射率比Rp/Rs=tanPSIexp(i△)の入射角依存性の測定に成功した。
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