研究概要 |
1.元素マッピング用検出器の開発 (1)パラレル電子エネルギー損失分光法(PEELS)と走査透過電子顕微鏡法(STEM)を組み合わせた高速な元素マッピング法を開発するために,フォトダイオードアレイを用いたエネルギースペクトルの検出器と,スペクトルをコンピュータに取り込み,元素濃度分布を求める回路及びソフトウエアの作成を行った。 (2)はじめに試作した検出器には大きなチャンネル間クロストークがあったが,この原因はフォトダイオードアレイの窓と光電面の間での屈析による光の広がりであることを実験と計算から明らかにした。 (3)窓のないフォトダイオードアレイの光電面と電子検出用シンチレータとをファイバープレートで直結することによりチャンネル間クロストークを大幅に低減し,2eV以下のエネルギー分解能を得た。 (4)作製した検出系を用いた予備実験の結果,通常の検出器より約20倍高速に元素マッピング像をを得られることが分かった。 2.薄膜レンズによる球面収差補正 (1)高電流密度の極微小電子プローブを実現して高解像度・高SN比のマッピング像を得るために,STEMの電子プローブ作成用電子レンズの球面収差を補正する薄膜レンズを設計・製作した。薄膜として用いるカーボン蒸着膜を,備品として購入した超純水製造装置で得られる超純水中で処理することにより,電子線照射によるコンタミネーションの原因となる不純物を低減することができた。 (2)作製した薄膜レンズを,実際にSTEM観察装置を備えた電子顕微鏡に装着して,その動作を微小粒子の試料を用いた陰影像法により調べた。このとき,試料にコンタミネーションが付着するのを防ぐために,備品として購入した試料加熱ホルダーを用いた。実験の結果,薄膜レンズが凹レンズとして動作し,球面収差補正が可能であることが分った。
|