研究概要 |
1.元素マッピング用検出器の基本特性の測定 はじめにチャンネル間のゲインのばらつきを測定し、これをソフトウエアで補償した.さらに,検出器の検出量子効率(DQE)を測定した結果,低い検出電子数の領域で増幅回路のノイズがDQEを低下させることが明らかとなり,ライン周波数のノイズをソフトウェアで補償した結果,よりSN比の高いマッピング像が得られた. 2.球面収差補正による高電流密度電子プローブの実現 前年度に設計・製作した薄膜レンズを用いてプローブフォーミングレンズの球面収差を補正し,走査透過電子顕微鏡(STEM)像からプローブ電流密度を評価した.その結果,補正により同じ電子プローブ径内に約3倍の電流を取り込むことができ,マッピング像のSN比が向上して高解像度が得られることが分かった. 3.元素マッピング像観察と応用 (1)マッピング像の実現:STEMの走査に同期して内核励起電子損失スペクトルをコンピュータに取り込み,最小二乗法を用いてバックグラウンドの差し引き処理を行い,元素濃度をSTEM像として表示するソフトウェアを開発した.このソフトウェアによりパラレル電子エネルギー損失分光器(PEELS)に装着した検出器を制御し,検出信号を処理することによりマッピング像を観察できることを確認した. (2)応用:実際にカーボンマイクログリッド上の窒化ボロンのマッピング像を観察し,カーボンと窒素・ボロンの分離された像を得た.また,酸化ニッケルを観察した結果,スペクトル強度の低い酸素やニッケルについてもマッピング像が得られ,PEELSを用いた高感度の元素マッピングが達成できた.
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