研究概要 |
本研究課題は,粉体材料について"粉"の状態から成形固化に至るまでの粉体の挙動を,近年種々の分野で展開されている計算材料科学的なアプローチ,すなわち粒子動力学(Praticle Dynamics)あるいは個別要素法を確立することによって解明し,最適な粒子設計の指針を得ることを目的とするものである.主な成果は次の通りである. 1)粒子の特性としては粒子の寸法,粒度分布および変形特性,粒子間の相互作用の特性としては摩擦力および弾性変形による反発力を導入したアルゴリズムを開発した.これによって弾性変形が主体であるセラミック粉末の成形特性のシミュレーションが可能となった.また粉体のマクロな特性として重要な見かけ密度,タップ密度,安息角等を求めることが出来,これらに対する粒子間摩擦の影響を調べることができた. 2)さらに延性金属粉末では粒子の塑性変形の影響も取り込んだ成形の3次元シミュレーション手法を開発した.これは粒子形状の変化を考慮するもので,考慮しない場合に比べて,定量的にもよりよい圧力-密度の関係が得られた.これには粒子のミクロ圧縮試験結果および有限要素シミュレーションが基礎となっている. 3)粉体の3次元圧縮成形実験ならびに連続体としての構成式から予測されると同様な降伏曲面が得られた. 4)磁性粉末の成形において磁気特性の最適化を目指し,上記のシミュレーションに磁場による影響を導入して,磁場中成形の2次元シミュレーションのためのアルゴリズムを開発した.これによって,型成形よりも静水圧成形が最も磁気配向性がよくなることを示した. 5)以上では粒子形状として2次元では円,3次元では球のみであったが,異形粒子の挙動シミュレーションのための手法を新たに開発した. 今後の課題としては成形圧力に関してさらに定量的精度の向上を図ることと,粒子形状の影響についてさらに詳しく検討を進めていくことである.
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