研究概要 |
本研究では,(1)シリコンカーバイト短繊維強化アルミニウム合金の一定高温度下の疲労過程のその場観察,と(2)一方向カーボン長繊維強化ポリエーテルケトン(PEEK:熱可塑性樹脂)とポリイミド(PMR:熱硬化性樹脂)積層板の高温破壊過程のその場観察を行っている. (1)の材料は日本材料学会高温強化度部門委員会の共同研究として実施中のラウンドロビンテストで使用されているものであり,他機関で実施された静クリープや高温引張り等の結果を参考にして,金属基複合材料の高温破壊過程について基礎的な検討を行っている.クリープ疲労試験を開始し,変形特性等の基礎的データを取得した。300℃における試験より,少数の微少なき裂の発生・成長により疲労破壊がもたらされることが判明した.さらに,高温疲労試験装置付き走査型電子顕微鏡の調整を行った.試験装置については基本的な問題はないが,試験中に加熱体が試験片表面に蒸着するため,長時間の試験には問題があることが判明した. (2)の研究はCFRP(炭素繊維強化プラスチックス)に関する基礎研究の一つであって,PEEKについて高温条件下で疲労試験およびじん性試験を行い,はく離進展の観察実験を行った.200℃における疲労試験結果より,時間依存性と繰返し数依存性のはく離進展が確認された.前者の成長速度はエネルギ解放率によって,後者のそれはエネルギ解放率の変動幅によって支配されていることが判明した.また,試験温度が高くなるとともに破壊じん性は上昇する傾向があるが,150℃以上になるとクリープの影響によってじん性が低下する.ただし,これらのはく離進展には繊維架橋が大きな影響を及ぼしていることが判明し,現在はこの点についての検討を開始している.
|