研究概要 |
火力発電設備に限らず,一般に機器,構造物の有効利用のためには,まずそれらの安全確保が先行しなければならない。そこで本研究では,安全確保に必要な,実施可能なき裂伝ぱ寿命予測体系の確立と,それに直結したき裂伝ぱ挙動に関するデータベースの構築を目的とした。 本年度は,18-8ステンレス鋼および経年劣化した21/4Cr・1Mo鋼を用いて,高温き裂伝ぱ実験を行い,以下の結果を得た。(1)レーザ干渉法を用いて,高温におけるき裂の開口変位と開閉口点の高精度測定を行った。Pt板と干渉フィルタを使用することにより,従来測定が困難であった650℃においても,18-8ステンレス鋼のき裂開閉口挙動を高精度で測定することが可能となった。また,荷重波形を調整することにより,周波数をあまり下げることなくき裂開閉口を測定することができた。(2)450℃,550℃および650℃において応力比R=-O.1,0.5周波数ν=30Hzのときの18-8ステンレス鋼の疲労き裂伝ぱ挙動を調べた。R=-O.1のときにはき裂閉口が認められたが,R=0.5のときにはき裂は開口したままであった。高温条件下においても,き裂伝ぱ速度da/dNは,Rによらずき裂開閉口を考慮した有効応力拡大係数△K_<eff>の一価関数として整理できた。(3)18-8ステンレス鋼について,650℃および室温における疲労き裂伝ぱ挙動に及ぼす試験片の板厚および試験片形状の影響を調べた。下限界の近傍では,厚い試験片ほど,き裂伝ぱ速度は高く,下限界値は低くなるという結果が得られた。(4)経年劣化した21/4Cr・1Mo鋼におけるクリープき裂伝ぱ挙動を調べた。溶接熱影響部より採取した材料のき裂伝ぱ寿命は母材の寿命より短かかった。クリープき裂伝ぱ速度da/dtは,修正J積分J^*によりよく整理でき,その整理結果は他の研究者の結果とほぼ一致した。
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