本研究は接着継手を界面の問題としてとらえ、最近の進展の著しい界面破壊力学を用いて接着継手・構造の定量的な強度評価手法の確立を目的とする。本年度は自動車車体用の軟鋼板・表面処理鋼板・鋼張力鋼板およびアルミニウム合金などの各種の接着継手の疲労強度データをとりまとめ、資料集を作成するとともに接着継手の疲労強度に及ぼす材料、接着剤、板厚、試験片形状の影響を明らかにした。また従来のスポット溶接継手と比較して、接着を自動車車体に適用する際のメリットなどを自動車技術会軽量化接合構造専門委員会(委員長 結城良治)の共同研究としてとりまとめた。 さらに本年度は自動車のアルミボデーによる軽量化の動向に伴ない、アルミ合金接着継手の疲労試験およびその界面き裂の応力拡大係数の解析を重点的に行ない、アルミ合金接着継手の疲労強度も界面破壊力学により統一的かつ定量的に評価できることを確認した。また接着継手の疲労強度の向上をねらいとして、被着体表面の接着端近くにディンプルないし溝加工を施す方法を提案し、疲労試験を行ないディンプル加工により疲労寿命が著しく向上することを実証するとともに、その界面き裂のBEM解析によりディンプルのクラックアシスト効果を定量的に解析した。 以上の研究により従来定量的な評価が困難であった接着継手の疲労強度が、接着界面を伝播する疲労き裂の伝播過程とみなし、界面破壊力学に基づき評価することにより、定量的かつ統一的に評価・予測できることを明らかにした。
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