軽量化・低振動性および剛性向上を目的として、航空機をはじめ、車輌・自動車・電機などの各種分野で構造接着技術の利用が進められている。特に最近の地球環境問題から軽量化が迫られている自動車ボデーではアルミボデー化とともに構造接着の利用が注目をあつめている。構造接着の適用を図るためには、接着構造の強度・安全性の実験・研究の蓄積とともに強度評価法の確立が重要な課題となっている。しかし、有機系接着剤と金属との全ったく異なる材料が接合された接着継手の強度評価には、いわゆる界面の問題や界面端の応力特異性の問題などのため困難を伴ない、定量的評価法は確立していないのが現状である。 本研究は接着継手を界面の問題としてとらえ、最近進展の著しい界面破壊力学を用いて接着継手・構造の定量的な強度評価手法を確立することを目的とする。本研究で得られた主たる成果として以下の点が挙げられる。 (1).自動車車体用の軟鋼板・アルミ合金の各種接着継手の疲労試験を行ない、疲労強度に及ぼす各種因子の影響を明らかにした。また、自動車ボデー用材料の各種接合継手の疲労試験の結果をとりまとめ、データ集として出版した。 (2).接着継手の応力が高精度・効率的に解析できる境界要素法弾性解析システムを確立した。 (3).接着継手の被着体表面にディンプルないし溝加工を施すと疲労強度が著しく向上することを実験および解析により明らかにした。 (4).従来、定量的評価が困難であった接着継手の疲労強度を界面破壊力学に基づき評価し、定量的かつ統一的に評価・予測できることを明らかにした。
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