研究概要 |
人間にとって最も我慢し難い感覚感性の一つである眠気を詳細且つ総合的に研究した。特に,悲惨な交通事故の原因の一つである居眠り現象を力学的環境を測定することによって解明出来ることを示した。人が感ずる眠気の特性パターンを先づ明示するために本科研費により購入したロガーマスタおよびシグナルプロセッサを感圧ゴムセンサと組み合わせて力の測定に基づく感性解析システムを開発した。このシステムが十分な測定能力を有していることを確認した後,車両運転時の居眠り現象解明のため適用した。予め睡眠時間を制限した被験者の手掌部に感圧ゴムセンサを貼り着け,被験者の運転時の状況と覚醒度の低下を確認するために被験者の前方顔面映像と上肢後方からの映像をそれぞれ2台の8mmビデオ・カメラで記録した。同時に,停止・直進する自動車で被験者のハンドルを握る力の変化パターンと覚醒状態から居眠り状態への移行の関連性を測定した。比較のために一定の経路を一定走行する場合の上記パターン解析をも行った。右利きの被験者の場合,左手人指し指と中指に最も大きな感性表現があり,利き手側の右手中指は他の4指に比べて最も大きな反応を示すが左手側のそれと比べて半分以下の反応を示した。これらを含めて得られた測定結果より,運転者が居眠り状態に移行する場合,眠気が襲って来るとともに筋肉の瞬間時な弛緩により手掌部の握力に基づく測定圧力は一端低下する。次いで,瞬間的に意識を正常状態に戻そうとして握りを強くし,危険を意識するが,更に眠気が強くなって同様な繰り返しを行う。この後,睡魔に負けてハンドルを握る力が急激に低下するとともに居眠り状態に陥入ってしまう明白なパターンが存在することを明らかにした。
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