研究概要 |
薄膜の機械的特性値の有効な推定試験法を考察することを目的として次のような理論的,実験的研究を実施した。 1.単体と2層体間の弾性接触問題を解析する理論の確立とその応用ヘルツの接触理論を拡張して,単体と薄膜を有する2層体とが接触する場合の応力分布や変位を求める簡易理論を提示した。またこの理論の有効性を検討するため、薄膜厚さや薄膜と基板およびこれと接触する弾性球体のヤング率等の広範囲な変動モデルに対する接触応力分布や接触領域を数値的に求めた。 2.薄膜のヤング率とポアソン比を推定する理論の提案 1の理論を応用し,薄膜を有する基板に鋼球を圧入する実験から,薄膜のヤング率とポアソン比を推定する方法を考案した。その方法は種々の寸法の鋼球を種々の厚さの薄膜,基板モデルに圧入し,その圧入荷重と接触域の大きさを測定することによって,逆解析的に薄膜のヤング率とポアソン比を求めるものである。この方法の有効性は数値計算的にも検討された 3.エポキシ薄膜のヤング率とポアソン比を推定する実験と評価 2の方法を利用し,アクリル基板にエポキシ薄膜がコーティングされている2層体に鋼球を圧入し、その圧入荷重と円形接触域の寸法を測定し,それらのデータを基に、最適化手法を利用した逆解析手法によってエポキシ樹脂のヤング率とポアソン比を推定した。これらの値は、別に実施された引張試験によるエポキシ薄膜のそれら特性値と比較的良く一致していることが確認された。 4.弾塑性有限要素法を用いた薄膜の非弾性特性値推定の試み、弾塑性有限要素法を用い、薄膜が弾完全塑性材料で、基板が弾性材料からなるモデルに対し、薄膜の降伏点等の推定の可能性を調べる計算を実施した。
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